11月10日(水)。昨日同様、早朝から雨模様でしたが、お昼前には陽射しも出てきました。それにしても空気がピリッと冷たい。秋もどんどん深まりそうですね。
さてそんな本日は奈良の話題。最近ニュースになった「寄付」にまつわるお話を2つご紹介します。
■猿沢池の環境調査と保全「ひとななプロジェクト」の募金自販機
まず、興福寺。
南円堂の正面の横の「無料休憩所」というのぼりが目につく売店。この正面に設置されたドリンクの自動販売機に、募金のボタンがあります。
これは「ひとななプロジェクト」という活動の資金を援助するためのもの。
「ひとななプロジェクト」とは、近畿大学農学部環境管理学科の北川准教授の研究室が、昨年度より興福寺と連携して取り組んでいる「猿沢池とその周辺の環境調査・保全のプロジェクト」。今年3月には研究室の学生が「灯と奈菜(ひとなな)」という任意団体を設立し、猿沢池の保全の活動を一層強化しています。
この研究室ではこれまで数回にわたる猿沢池の水生生物調査を実施し、比較的多くの在来種が生息していることが確認できた一方、外来生物・特定外来生物の繁殖も確認されました。
また興福寺の伝統行事である放生会(ほうじょうえ)もこの調査を受けて、在来種のみを放流するよう改められたり、興福寺南円堂の古瓦を用いた漁礁を設置し、在来生物の繁殖を助けたりといった活動がなされてきました。
今後も継続的な生物・水質調査を行い、外来生物の除去や猿沢池の環境改善、地域を巻き込んだ池の魅力向上などの活動が予定されています。
この支援型自動販売機はそのための資金を確保するためなのはもちろんですが、この募金活動が、地域の人たちや観光客の方々が猿沢池の環境について考えるを契機になることが期待されています。
■奈良博 茶室八窓庵と庭園の修復のためのクラファン
お次は現在正倉院展が開催されている奈良博。奈良国立博物館です。
こちらでは2021年10月27日より、敷地内にある茶室「八窓庵(はっそうあん)」と庭園改修のためのクラウドファンディングが開始されました。
八窓庵は奈良博の新館の南側の庭園内に佇む小さな茶室です。
ふだんは公開されておらず、新館のピロティから外観が望めるだけですが、2012年からは茶室の貸出が行われており、イベントなどでの利用も可能となっているそうです。
時々一般公開されていることもあるので、アカートもかなり前に見学させていただいたことがあります。
もともとは興福寺の大乗院庭内にあった茶室で、江戸時代中期に建てられた、多窓式茶室です。地元に永久保存されることを願う人たちの手により、明治25年(1892)に博物館の敷地に移設されました。
しかし、近年、劣化・損傷のスピードに対して修理予算が追いつかず、損傷が目立ってきたということです。また庭園についても、池や樹木などの露地景観の悪化や橋の損傷などが深刻になっているそうです。
平成22年には庭園の一部の改修が行われましたが、緊急性の高い最低限の箇所のみ。そこでこの茶室を後世に残すため、2020年に抜本的な改修計画が立てられたのですが・・・。
永久に残すことを願って博物館に献納されたものの、博物館でももはや最低限の修復しか行えない・・・確かにあの正倉院展ですら昨年は例年の1/8以下の入場者しか受け入れられない状況だったそうで、それが今年も・・・。国立とはいえ自立的経営が求められる博物館には、かなり深刻と言わざるを得ないですね。
◯茶室 八窓庵及び庭園改修のためのクラウドファンディング
[実施期間]2021年10月27日~12月26日
クラウドファンディングページはこちら
クラファンと聞くと、ちょっと難しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ネットショッピングくらいの感覚で寄付ができます。5,000円~1000,000円まで様々なコースがあり、お礼の品も豪華。初めての方もぜひこの機会にお試しください。
今回はたまたまここ数週間でニュースになった案件を2つご紹介しました。
たしかに今の日本の経済はかなり厳しい状態で、物を持たないこと、買わないことが美徳という風潮も見られます。ただ一方ではこういった寄付や募金、クラファンという活動で思いの外スピーディーに資金が集まるという現象が起きるのも事実です。
個人個人の金額は小さくても、それが集まれば大きな結果につながります。
せっかくなら未来のために、善意を、お金を使ってみてはいかがでしょうか?